我が胸の東京タワーに似た熾火（おきび）

はつ雪のすばやく悪に染まりけり

冬の雷われ指させば海に落つ

たこたらこしらこかずのこにらめっこ

白髪分け鳥の卵を見つけたり

北方に並べた皿が霞みたる

空き缶の私のかわりに錆びる心

雪解野や焼かれし詩業の灰が降る

看板の美女に非美女になごり雪

へそ曲がり狐嫁入り眠くなり

駐車場ごとに火柱春隣

銀の鳥寂しい町に降りしきる

松枯れてなおちくちくと青きもの

陸橋の継ぎ目あたりに春が洩れ

街の灯や綿毛のごとく飛び去れり

糞の跡白し燕の来（きた）るらし

カーテンのまだない部屋に光の粉

半ドンの少年たちは海風に

やりかけの雨乞い思い出せば雨

雷（いかずち）が天に昇っていくまひる

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（TEXT BY　前島鵞朝）