寂しくもなしマフラーを二本巻く

女生徒の手話賑やかにクリスマス

陽光の丘四散する十二使徒

電子レンジのどこが回るの冬の空

はつはるや鮫洲も鮫のにぎわいに

プレハブのそろばん塾の窓に鮫

虎の子の小さく吠えて諦めり

眠そうに見えて噛まれてみれば虎

初煙草火を貰うとき皆無口

深酒や冬木に高く初日の出

マスクして年賀の声をやりすごす

初凪ぎや虎のあくびを数え居り

御慶かな休耕田に虹刺さる

あぜ道の崩れ五色に冬の蛇

ハンカチの四隅に塩を盛る女

初夢やまた闘牛士かもしれぬ

家々に雪や炬燵に炬燵猫

国宝となるべき人も股火鉢

南天の赤い目溶ける雪だるま

祖父の祖父の祖父の法事やお燗番

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（TEXT BY　前島鵞朝）