こぼれるや大路を白く百日紅

絵を抜けて夜毎に太る大童

ガラガラヘビの話聞きたし山に雨

草色の御池ほつほつ息をせり

昼花火梵天の髭跳ね上がる

軒下の細き日陰を争えり

夏草の匂いの奥に仏の座

四隅から粉になりゆく角座頭

窓の端まで雲流れ兄縮む

新盆や両手に西瓜雲の色

目覚めれば見知らぬ星座桃郁る

敗戦や新しい皮膚這うように

蝉の穴砂地から指生えさうな

木のうろを覗き込む背が夕焼ける

いっぽんの茶柱と化す熱帯夜

オセロする夜コンビニの床冷えて

うたた寝す十二神将夏(げ）の終わり

こしらえの國へゆきたし缶チェリー

無人駅の舳先に少年ゆれて立つ

この星に立てり草笛鳴らぬ日も

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（TEXT BY　前島鵞朝）