水を飲む永遠に若い幽霊のように

雨の日の母のクロール鱗光る

はだしのままオフェリア流れ着く氷河

鏡から瀧の音する理髪店

要領を得ぬ訃報来て夏至祭

ドーナツの匂い殺し屋の部屋はみな

改札でまたも見送るあひる口

縁側に這い出て送り火を数え

仙人の松の実嫌い枸杞（くこ）嫌い

恋と窓間違えたまま開け放つ

壁紙の花食む娘十五歳

薄闇のコンビニ流れ込む銀河

観覧車生活長し顎長し

飯饐（す）えて正義の唄に唱和せず

猿顔の花に水やる日の盛り

黄金虫ダリアの園で無為徒食

ほうたるのほたりほたりと散華せり

夕立や俺の足音散り散りに

蝶去りてペンギン宙をみつめおり

眠れ人も彼らを統（す）べる牛たちも

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（TEXT BY　前島鵞朝）