井戸に落ちたシェークスピアから罵詈雑言

無駄足を二本増やして起きられず

遠鳴りや海の紫立ち上がる

梅雨入りや靴下にＬとＲあり

会社員のシャツの背丸く嵐をはらむ

昼火事や床屋のマントのままの人

あかつきの霧に取っ手がついている

十字架にまた蹴躓く敬虔さ

浮き輪の中で口いっぱいのシュークリーム笑い過ぎて泡になりそうだ

少しだけ眠くて心中またこんど

月のピアノ糸が震えているばかり

雨上がり末期の菖蒲猫の柄

乗り換えを間違えるたび雨強し

萎れつつ倦みつつ商店街に夕日

夏夢夜（ないとめあ）いつものように墓が開き

生まれ変わるならば日向に眠る亀

壁に貼られた営業グラフの右上の空き地で暮らしたい

〈開幕！　規格院VS組み立て人ギルド〉

冴え返る迷宮パーツ規格院

凡そ天下一無碍なる迷路組み立て人ギルド乾杯（プロージット）！

非迷路は迷路に通ず逆もまた　〈組み立て人ギルドの言い伝え〉

TEXT BY　前島篤志