俳句欄


「さくらさくら」20句


腹に巻く恐怖新聞花の番

寝て起きて桜の春やまだ睡(ねぶ)く

蛸の手に吸盤桜の枝に花

夜桜にまぎれ羽鰐(はわに)が背に肩に

乗るバスを間違えたらし花に雨

ひと雨に流れゆく白 花と雪

崖下にいぬのふぐりのこぼれたり

膝丈のわらべ縦横新空港

彰義隊崩れ所望す雪解け水

かぜやみて春昼にきくみずの音

永日の漢方相談茶を二服

宿題も木の香する材木店

のり弁のおかず論争丸の内

沼はみどり露骨な装置沈みゆく

埃の町も新芽も洗う雨だ今夜は

ネオン泣く中央医院性病科

熱引かず苺の薫る枕もと

フクロウの聴き分けてゐる森の楽

川霧の中で羽化する青梅線

薄羽根を背に貼り付けるおとうとよ

TEXT BY 前島篤志


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