Long goodbye（いざさらば）あえて大きなモーションで

白梅や次元の割れ目から咲けり

きれぎれの生命線や春隣

いもうとの脱獄の報冬銀河

バスタブに肥え広がりて補陀落行

ふくろうの眼にあかあかと冬の昏（くれ）

まはだかの銀杏の乳房めでたけれ

老梅の年輪一年分光る

コーヒーのみるみる冷めて天気雨

両国の春象の鼻横たわる

鼻塚のぐるり梅幸仁左衛門

猫鳴くや大阪駅のどこぞから

道学者古墳のすそを耕せり

ベランダの鳥の卵を踏めば春

きなこパン大口開けば春陽さす

大風やなにが不安か百舌鳥に聞く

春の原横たふ骨になつたふり

寂しさよ春は名のみのバター茶（ティー）

放置自転車すなわち私花積もる

適当といえば適当創世記

TEXT BY　前島篤志