天命反転住宅前に死蛍（しにぼたる）

溶けかかる黄泉比良坂（よもつひらさか）夏真昼

真夜中のバイバスよみの坂を過ぐ

女生徒の正拳清し通学路

曽祖父の午睡千年往還す

五月雨や女の足の痺れ取る

地図どおり行けば死海に俺の家

五月天俺の居るべき穴ありや

神木の洞（うろ）から響く俺の聲（こえ）

神渕川（かぶちがわ）草の実くわえ蛇泳ぐ

ゆつくりと日陰づたいに夏参り

新緑のかすかな息が降り積もる

千年を気楽に生きるとふ悪行

土となる途中に鹿の糞と我

初夏や水子地蔵に水を撒く

敗将の尿(しと）するところあぐねけり

くにぐにの阿弥陀の磁場や夏巡る

三日月の尖りみやこに男あり

メトロポリタンの阿弥陀も我を救ひ給ふ

夏草や湧き立つやうな仏たち

TEXT BY　前島篤志