草上の昼食株式欄光る

ほとぼりを冷ます画商や燕来る

梅雨入りや微熱の妻と昼籠り

万物の濡れてタレスの星朽ちる

ちくわぶや愚かなるわが恋ごころ

片付かぬこと我にあり猫洗う

彗星に我が名をつける辞世かな

廃帝の寝室蛇の世話をして

反省の海悔恨の島の娘

この世の外があるとしてさて雨が漏る

落魄の新聞受けに稲妻が

自転車をかついでエレベーター満員

梅雨明けやおんなに着替え捨てられる

雷神の刺青両頬夏祭り

馬鹿のふりして信号の赤を待つ

息子には息子のつとめ青嵐

半漁人下駄を鳴らして夏の路地

受難曲我が忘恩の清々し

曇天光急くことさらにないふりで

白線の内側で待つ大夕焼

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（TEXT BY　前島鵞朝）