ここからは青葉となつて光るかな

また夜のコンクリートに触れに行く

電波塔友の前髪燐光す

古地図にガソリンスタンド森深し

桜さくら正気さみしと風呂洗う

桜散るあによめ爪を剥がしつつ

大理石美女の背中に渦模様

古タイヤ置き場まで散る花一片

躑躅啼き禽咲く嵐みなみより

むらさきの雲をかくまう山の村

墓よりおとうと帰りて風呂場泥だらけ

春に降る湖国の雨はうみの子供

灰散ると見れば老父の髭剃り機

子らの手の形に障子破れおり

鮫が鮫に触れやうとして春の凪

春の藪五百羅漢が地から生え

早苗田や産土（うぶすな）神のカルタ取り

軽トラの傾く畦（あぜ）や水ぬるむ

半ズボンはいていくさの似合わぬ父

水曲がる風の強さや我が五月

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（TEXT BY　前島鵞朝）