積乱雲今日は隣の子が消える

想像がみな存在になる真昼

机に入れたままのノートに夏の歌

倒れ臥せば胸まで染まる草いきれ

理科室の俺の真横で蝉時雨

涼しさや剃刀で剥ぐ葉脈の

悪い風吹く午後のための下校ルート

パンク聴く電車の窓に赤い月

夜半の雷家業潰れしこと夢に

注射針廃棄物入れでも光る

二十世紀美学を悼み煙草に火

かくれんぼ運河の暗い水の中で

火事の香が頭で爆ぜて夏の納屋

精霊馬仏のいない村駆ける

流星を百個数えるまで野宿

まあだだよ声は聞こえて神隠し

火の鳥の尾の羽毛（はねけ）舞う夜の庭

帆船や妊婦の白いワンピース

俺が国道沿いの自販機ならば百年君を待つ

猫のさかだちどう思う秋の風

TEXT BY　前島篤志